太平洋戦争中の、日本海軍の秘密兵器、酸素魚雷に搭載された ジャイロコンパスです 水上艦用の九三式酸素魚雷及び、潜水艦用の九五式酸素魚雷に使われたようです。 魚雷は目標に向かって発射された後、航走中に、本体の非対称性、海流、波浪等の 影響で次第に、コースを外れて行きます、 これを防ぐため、回転する、はずみ車 の回転軸はそのままの姿勢を保つと言う性質を利用して、舵を自動補正し 魚雷が直進するような仕組みが組み込まれていました、これが、縦舵機と呼ばれる物です。 |
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潜水艦の天測計算器 |
私は、魚雷の専門家ではないので、説明文に誤りがあるかもしれませんので ご了解下さい、 本来の用語は解りにくいので勝手に部品に名前を付けましたので 他へ、流用しないで下さい。 |
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この縦舵機は他の形式の縦舵機に 比べて、かなり複雑で、大きく、重い のです 酸素魚雷は長大な射程を誇り、 航走時間も長いので、 はずみ車回転用の圧搾空気を節約 するため、工夫が凝らされています。 |
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各部のグリースが固着して可動部は どこも動かなくなっていたので 分解して、洗浄、注油しました。 |
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このサイトで紹介している、四式、九一式など 他の縦舵機は、はずみ車を回転させるため はずみ車周囲2箇所に空気吹き出しノズル を配置し、大口径のノズルから、大量の空気 を、吹き出しています、 本機は、空気を節約するため 極めて小さな吹き出し口を持つ ノズル一本が、はずみ車に接近して 配置され、その為、はずみ車円周上の 空気流を受けるための溝は幅も狭く 小さく彫られています。 |
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ノズル(噴気管)拡大画像 爪楊枝のようなノズルの先端に吹き出し口 自由に回転する、はずみ車の保持枠の中を 空気管が通っているので、 保持枠の軸受けは空気を通す構造になっています。 |
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小さなノズル一本からの僅かな空気流では はずみ車の回転を維持するのが精々で 魚雷の起動時、回転数が上がらないので 起動時、海軍ではタービンと呼んでいる、 羽根車をクラッチを介して、接続し タービン周囲に配置した四箇所の吹き出し ノズルから大量の空気を吹き付けて 一挙に起動しています。 |
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はずみ車とタービンが接続している |
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回転数が上がると、外部からの操作で クラッチが切り離され、 タービン用の空気弁も閉じます この方式を 分離タービン式縦舵機と言います。 |
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まるで、歯車のようなタービン | ||
酸素魚雷は長射程な為か、更なる工夫が 魚雷は舵の駆動に圧搾空気を使用し 空気は縦舵機の空気弁から送られます、 普通、縦舵機の空気弁は、はずみ車の軸 につながっていて、魚雷の進路がずれる毎に 空気弁を動かしていますが 回転軸には、反力と言うか、ストレスが 加わって、舵を補正する毎に 回転軸の精度がずれてしまいます。 射程が長いと、舵を補正する回数も増え 又、精度を上げないと、長距離の照準が 合わない事になります、 九八式縦舵機では、精度を上げるため 空気弁を回転軸で直接、駆動せず 空気力学的な巧妙な方法で、ほとんど 反力を受けずに、弁の開閉を行っています。 左図で、魚雷が直進している時は ダイヤフラム空気吹き出し口から 左右、等量の空気が吹き出しているので ダイヤフラムの左右の圧力は バランスして空気弁は中立です 進路がずれると、吹き出し口カバーが 回転し、片方の空気出口が遮蔽され ダイヤフラムの左右バランスがくずれ 空気弁の弁体が移動し、舵へ空気が 送られます。 ダイヤフラムの吹き出し口と 吹き出し口カバーは 微妙な間隔で、接触してはいないため 無抵抗で回転します |
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ダイヤフラム空気吹き出し口 細い、スリットになっている カバーは、先端がナイフエッジ状で はずみ車の、軸の僅かな変位で ダイヤフラムが動きます |
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ダイヤフラム室外観 内部、ダイヤフラムの幕 |
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舵駆動用 空気弁の弁体 鉛筆の芯、程度の細さ |
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ダイヤフラム吹き出し口は 上部の舵補正ダイヤルで 回転出来る 魚雷発射管の向きと、 目標がずれている時 ここで補正しておくと 発射後、目標へ向かって 旋回する ダイヤルのフランジは 魚雷の外部から操作する機構 と接続する物。 |
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鍵付きの収納箱 | ||
この縦舵機は格納するとき はずみ車を取り外し 分割して収納しています この機のはずみ車はかなり 重い為、組み立てたままだと 移動中に軸受けが持たないのか? しかし、組み立てにも、かなりの技術 が必要なのでは? 精度に影響しなかったのか心配します。 |